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  第5回 著作権者の権利が制限される!?

 

  第4回では、著作権とは何か、著作権を持っている著作権者が何を主張できるかについて見てきました。著作権とは、基本的にその著作物を創作した人だけが持つことができる権利で、本をコピー機でコピーする、音楽をネット上で配信する、楽曲を演奏するなど、その著作物のあらゆる利用についてコントロールできるものです。
 しかし、著作権者だけが持つこの独占的な権利が制限されてしまう場合もあります。今回は、そのような場合について考えていきましょう。


権利者の許諾を得ないで著作物を利用できることがある
  著作権者以外の人がある著作物を利用したい場合、基本的には著作権者に対してすべての利用についていちいち許諾を取らなければなりません。例えば、アーティストAのCDを購入したXさんは、とてもその曲が気に入ったので、自分のホームページのBGMに利用したいと考えました。この場合、アーティストAに許諾を得ない限り(実際は、JASRAC[*]やレコード会社、所属事務所などに許諾を得る場合がほとんどですが)、ホームページ上で音楽を流す行為は、アーティストAの複製権、公衆送信権を侵害してしまいます。
 しかし、例えば「本1冊を持ち歩くのは重いので、自分で購入した本をコンビニ等で数ページだけコピーしたい」といった場合でも、その本の著作権者にいちいち問い合わせて許諾を得なければならないのでしょうか。このような場合まで許諾を得なければならないとなると、著作権者にたくさんの許諾依頼が来てしまい大変なことになりますし、また利用する側も大変な手間となります。このような権利者、利用者の双方にとって都合が悪い場合、教育などの公共の利益のためなど、著作権法では第35条〜第42条において、「著作物の利用について権利者に許諾を得なくてよい場合」を具体的に規定しています。さきほどの「本を個人的な利用のためにコピーすること」については、第30条で「私的な目的であれば権利者の許諾を得ずに複製をしてもよい」とされていますので、利用者は許諾を得ずに本をコピーすることができます。ここで気をつけなければならないのは、「許諾を得なくてよい」=「著作権者の権利がなくなった」ということではないことです。著作権者は依然として著作権を持っています。ただ、「本を個人的な利用のためにコピーすること」に対して、ノーと言うことはできず、またそこからお金など対価を得ることもできないと著作権法に規定されているので、著作権によってコントロールすることのできる範囲が制限されているのです。

「教育利用、非営利利用は自由」はホント?
 他人の著作物を利用する場合に、ときおり「教育利用だからタダだよね」、「非営利利用だから許諾を取らないで勝手に利用して大丈夫」という声を聞きます。このような場合も確かに上記で述べた「著作権者の権利が制限される場合」として著作権法に規定されています。しかし、この「教育利用」「非営利利用」という言葉は、やっかいです。「教育」とはどのような範囲を含むのでしょうか。小学校、中学校などでの義務教育、大学での教育、企業内などでの教育、塾などでの教育、そして美術館や博物館などで行われるワークショップも教育です。しかし、著作権法の指す「教育」の範囲は大変狭く、義務教育、大学教育機関における教育などのみを指すと考えた方がよいでしょう。また、この「教育目的利用」規定(第35条)は、どのような利用が自由、つまり許諾なしで無償で利用できるのか細かく規定しています。ですから、なんでもかんでも義務教育だからといって自由に利用できるわけではないのです。さらに、「非営利目的利用」はどうでしょうか。例えば、美術館が主催するワークショップなどは、参加者から金銭を徴収しないケースもあると思います。しかし、アーティストに対して報酬が支払われている場合は、非営利といえない可能性があります。また、この「非営利目的利用」規定(第38条)についても、どのような非営利利用が自由に可能なのか細かく規定されているので、非営利目的ならどのような利用であっても自由という訳ではありません。
 今回は、著作権者の権利が制限され、利用者が自由に著作物を利用できる場合について取り上げました。次回は、特にどのような「教育利用」や「非営利目的利用」が可能で、どのようなものがダメなのか、詳しくみていきます。


[*]:一般社団法人日本音楽著作権協会。権利者から著作権の管理委託を受けて集中管
  理する団体。


※この記事は『ミュゼ VOL.92』(2010.4.25発行 株式会社アムプロモーション)からの転載です。

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