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  第9回 写り込みと著作権
      〜写真の背景に写った絵画、彫刻、建築物〜

 

  今回は、いわゆる「写り込み」について考えたいと思います。美術館で開催されたワークショップの様子を伝えるために、美術館内で参加者の様子を撮影した場合、写真や映像の後ろに絵画や彫刻などが映り込んでしまうことがあると思います。Web上でワークショップの様子を伝える画像や映像を公開したい場合は、絵画や彫刻などがほんの少しだけでも写り込んでいれば、その著作権者に許諾を得る必要があるのでしょうか。美術館で所蔵している美術品でも、死後50年経っていない場合は、たいてい著作権者に著作権があるため、問題となります。また、公園に設置されている銅像と一緒に記念撮影をした場合はどうでしょうか。さらに、写真の背景に、建築物が写っている場合はどうでしょうか。


美術品の所有権と著作権
  美術館関係のお仕事をなさっている方にとっては、釈迦に説法かと思いますが、例えば、ピカソは1973年4月に亡くなっているので、著作権が譲渡されていない限り、2011年現在ではピカソの相続人に著作権があります。一方で、美術館にある絵画はほとんどの場合、「美術館のモノ」です。これは、絵画の所有権が美術館にあるからです。よって、美術館が入館料などを徴収して絵画を観覧させることは、所有権に基づいています。
 

美術館に展示されている絵画、彫刻などの美術品の写り込み
 さて、それでは美術館に展示されている絵画や彫刻が、美術館で行われるワークショップの記念撮影の背景などに写り込んでいる場合は、著作権者の許諾は必要でしょうか。残念ながら、この疑問は、イエス、ノーではっきり答えられるものでありません。
 「雪月花事件」という裁判例があります。照明器具のカタログ集に、売り物の照明器具がメインとして写っていて、その照明器具の写っている背景に床の間があり、そこに「雪月花」という現役の書家の書の掛け軸が写り込んでいたという事件です。裁判所は、カタログの写真の書を見るだけでは、文字の墨の濃淡、かすれ具合、筆の勢い等、その書家の作品における「特徴的部分が実質的に同一であると感知しうる程度に再現」されておらず、複製とはいえないとしています。カタログでは、書が限定された範囲でしか再現(複製されていない)ので、複製権を侵害しないとしたのです。ここで「ピンぼけさせれば複製ではない」のではないかという疑問が出てきますが、「作品の特徴的な部分が実質的同一で感知しうる程度」に再現されていれば、ピンぼけでも複製とされる可能性があります。ただ、上記の再現基準は非常に曖昧なものであり、なかなか判断の難しいものであります。写り込みが著作権侵害となるかどうかについては、個々に判断をする必要があり、やはり著作権者の許諾を取っていた方が安全だと考えられます。

公共の場所に設置されている美術品と建築物
 それでは、美術館の中ではなく、街路や公園などにある美術品はどうでしょうか。みなさんがどこかの公園に置かれている銅像と一緒に写った写真をブログでアップするには許諾が必要でしょうか。著作権法第46条は、公共の場所に置かれている彫刻などの美術の著作物と建築物について、いずれの方法によるかは問わず、自由に利用することができるとしています。ただし、「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」、すなわち、公園に設置されている銅像を写真に撮って、写真集として販売する場合などは許諾が必要とされています。
 よって、公共の場所に置いてある銅像などと一緒に写真を撮って、ブログで公開することなどについては許諾を取らなくても可能なわけです。ただ、ここでどこまでが公共の場所であるのか、という疑問が出てきます。入場料を取るディズニーランドは公共の場でしょうか、入館料は取らない公共の美術館はどうでしょうか。一般的には、どちらも公共の場所ではないと考えた方が良いでしょう。
 一方、建築物の場合はこの「公共の場所」という制限がありません。よって、「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」でなければ、写真の背景などに写り込んでいる場合も、建築物の著作権者に許諾を取る必要はありません。
 次回は、公共の場に設置されている美術の著作物、建築物に関わる事例をもう少し見てみます。


※この記事は『ミュゼ VOL.97』(2011.8.25発行 株式会社アムプロモーション)からの転載です。

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