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公開研究会シリーズ3 「ワークショップとクリエイティブ・コモンズ・ライセンス」

レポート/開催概要

 

2009年2月7日、「ワークショップとクリエイティブ・コモンズ・ライセンス」と題した公開研究会を、東京大学情報学環・福武ホールで開催しました。著作物の新たな公開方法として近年注目されている、『クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)』。その理念や規定は、ワークショップの知財のあり方にも活用できないものか?CCライセンスの基礎知識やワークショップに適用する上での問題点を共有するとともに、自身のワークショップのノウハウをCCライセンス的に公開している事例を参考に、出席者みんなで課題解決の糸口を探っていきました。

 
◎開会挨拶

 大月ヒロ子(ワークショップ知財研究会座長・IDEA,INC.代表)

「『ワークショップの普及を図る一方で、守るべき権利は守りたい』とする人たちでワークショップの知財について考え、気持ちいいコミュニティを作っていきたいと思った」と、ワークショップ知財研究会の発足経緯を改めて振り返った大月氏。その上で

■知財・著作権概論と、「時代と人が求めている」CCライセンスの解説
■〈かえっこワークショップ〉におけるCCライセンスの事例報告
■出席者全員でCCライセンスの情報を共有するパネルディスカッション

と今回の公開研究会がCCライセンスにフォーカスした内容であることを示し、「『こんなことが聞きたい』『こんなことで悩んでいる』『話を聞いたらこんな疑問がわいてきた』といったことなど、活発な意見交換をしていきたい」と出席者に呼びかけた。
 
 

◎知財入門第2回「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」
 井上理穂子(国立情報学研究所アーキテクチャ科学系 特任助教)

一つめのセッションは、▽「知的財産権」という言葉に含まれる権利(著作権や特許権、商標権など)▽著作権法が定める「著作物」の指す範囲――に関する井上氏の解説からスタートした(公開研究会02のレポートも参照のこと)。

このとき井上氏は、現行の著作権法が「著作物を利用するためには、どのような利用法であっても著作権者の許諾が必要」(もちろん、私的複製や教育目的利用等のように、法律上著作権者の権利が制限されている場合もある)としている点を指摘。情報技術(IT)の普及で著作物の流通量が爆発的に増えていることから、〈著作者/利用者双方の利便性を高め、人々の自由な創作活動がより一層発展することをねらいとして〉CCライセンスが提唱された、と発祥の背景を説明した。

CCライセンスは2002年にアメリカで発表され、現在、日本を含む世界約50カ国で利用されている著作物のライセンス(利用許諾条件)。簡単な手続きで著作物に一定のライセンスを付与し、インターネットを通じ世界に発信できる点を特徴とする。写真共有サイト『Flickr(フリッカー)』における画像素材や、米・マサチューセッツ工科大『MIT OCW』での教材情報など、CCライセンスにより公開されているコンテンツは増加の一途をたどっている。

井上氏は「専門的な知識がなくても利用でき、著作物の活用を促す」とCCライセンスの利点を述べる一方で、CCライセンスがあくまで〈利用許諾条件に関する取り決め〉に過ぎないとも強調。著作物の営利利用/非営利利用の解釈も、そのライセンス当事者にゆだねられている部分もある。また、CCライセンスそのものが閲覧の制限等を技術的に担保していないことにも言及した。

また、『ニコニ・コモンズ』『Pixiv(ピクシブ)コモンズ』など国内で発表されている類似ライセンスについても紹介。著作物の流通形態に新たな潮流が生まれつつあることを示唆した。


◎事例報告「かえっことクリエイティブ・コモンズ・ライセンス」
 藤 浩志(藤浩志企画制作室 代表・美術家

2000年より、おもちゃの物々交換を行うワークショップ『かえっこバザール』に取り組んでいる藤氏は、自身の活動を通じて見えた〈CCライセンス的要素〉について実例を交え解説した。

福岡県での開催を手始めに、これまで国内外3000カ所以上で行われている『かえっこバザール』。藤氏が〈OS的美術表現〉と言い表すこのワークショップは、〈人が集まる空間づくりのシステム化とその実践〉をコンセプトとする。実施に必要なツール類(カードやロゴ、のぼりなど)のデータは藤氏の著作物ではあるが、インターネット上で「みんなで楽しく使ってゆきましょう」とのスタンスにて配信。CCライセンスでいう《表示》に相当するものと考えてよいだろう。

このような配布形態に落ち着いた背景について藤氏は、「『自由にお使いください』と配ることで、自身の表現活動が一つのシステムとなりうるか検証したかった」と説明。子どもと大人がつながる場を〈OS〉として提供するにあたり、その利用が不便にならない仕組み作りに心がけている、とも付け加えた。

しかし、藤氏によれば「自由に使える『かえっこ』のシステムだが、変な使い方をされたり、誰が使っているのか見えなかったりするおそれもある。『かえっこ』のライセンスを誰が保証するの?という答えはまだ見えていない」との課題もあるという。ワークショップが著作物と認められていない現状もある。「ひとと一緒に作る、ひととの関係が出来ていく」ワークショップの面白さを強調する藤氏は、各地で『かえっこ』を実践する人たちと『全国かえっこマップ』を作り、その課題を解決したいと締めくくった。
 

◎ディスカッション
 パネリスト:
  大月ヒロ子(ワークショップ知財研究会座長・IDEA,INC.代表)
  井上理穂子(国立情報学研究所アーキテクチャ科学系 特任助教)
  藤 浩志(藤浩志企画制作室 代表・美術家)
 進行:
  橋本知子(ワークショップ知財研究会事務局・株式会社文化総合研究所)

三つめのセッションは〈ワークショップの知財のあり方〉に関する情報交換がテーマ。参加者から寄せられた質問がスクリーンに映し出され、密度の濃いディスカッションが進行した。

――ワークショップ自体に著作権がない、という点について改めて解説を。
井上氏「ワークショップの手順やノウハウはアイデアであり、それ自体は著作権法が規定する〈著作物〉ではない。著作権法は〈創作的な表現の結果である著作物を保護する法律〉なので、著作物の前段階であるアイデアを保護しようがないのが現状」
大月氏「ワークショップは、この20〜30年ほどで確立されてきた表現。今は著作物の範囲に含まれていないが、〈作品〉としての認知が高まれば将来的には保護対象になるのでは。今後の動きに期待したい」

――著作物でないワークショップに、CCライセンスをどのように活用できるのか。
藤氏「ワークショップを伝達するとき、企画書や映像などのメディアを使うことになる。アイデアもメディアに落ちれば、その時点で著作権が発生すると思う(CCライセンス活用の可能性がある、との解釈)」
井上氏「CCライセンスの類似例として紹介した『ニコニ・コモンズ』のように、特定のコミュニティの中でライセンスのルールを作るという方法もあるのでは」

――ワークショップの実施にあたり、日時・会場・参加人数・主催者などを詳細に記録すれば、諸処の問題を未然に防ぐことにつながるのではないか。
大月氏「いい提言だと思う。実施記録の有無は作家や主催者に委ねられているのが現状で、散逸の可能性をはらんでいる。ワークショップの実施記録を共有できるコミュニティや、データベースの整備が望ましいと感じる」

――ワークショップ内でできた作品の著作権は、作家にあるのか、参加者にあるのか。
井上氏「作家からアイデアだけが示された場合は、著作権は参加者のものとなる。作家が自身の著作物を示し、その著作物をもとに参加者とともに新たな著作物を創作したのであれば作家・参加者双方に著作権のある〈二次的著作物〉となる。ただし、事前に当事者間で書面等が交わされていれば、著作権法よりもその内容が優先される」
藤氏「共同制作した場合の著作権については作家が決めればよいのでは。ただし、その作品をどう流通させていきたいか?という視点はしっかり持っていた方がよいと思う。許諾の手間が多くなれば流通にも制限がかかり、どこにも発表できなくなる事態が出てくる」

――ワークショップの知財を考える上で、最初の発案者に利益が還元される仕組み作りが重要だと思う。『かえっこバザール』は収益につながっているのか。
藤氏「表現が作品となるプロセスに興味はあるが、その後の流通に関心がないのが自分自身の問題(笑)。『かえっこ』は金銭的利益を生んでいないものの、それゆえ『お金はともかく、何か面白いことをやりたい』という人たちとのつながりが増えた面もある。国内外の数千カ所で開催したことで相当量の人とモノが動いており、間接的な経済効果は大きいのではないか」

最後に大月氏が「実施記録のデータベース化や、〈アイデアを持つ人〉と〈作品化し流通させる人〉をつなぐ基盤の必要性が見えてきた」とディスカッションを総括。ワークショップにおける知財保護の意識向上には、当事者である参加者みんなで〈自分たちが望む環境〉を考え、思いを共有し、行動に移していくことが大切だと訴えた。
 

◎閉会挨拶
 田村 拓(株式会社CSKホールディングス 常務執行役員 社会貢献推進室長)
 
2001年開始のプロジェクト『CAMP』にて、さまざまなワークショップの開発と普及をすすめている田村氏。今回の事例報告を受け、「かえっこ」のようにワークショップの可能性や公開のあり方が、作家の手を離れオープンソース的に広がるのもワークショップの持つひとつの性質であることを示唆した上で、「ワークショップそのものではなく、ワークショップの構成要素を、既存の法体系で守るよう実用化する。そのような方法も課題にのせていいのでは」と今後の展開に向け、具体性を帯びた考えを述べた。

現行法に立脚して知財保護を考えねばならないという〈ワークショップが抱える本質的な問題〉を超えるためにも、「さまざまな問題点を共有しながら、ゆくゆくは法体系を変えていけるよう、この研究会でみなさんと力を合わせ、一緒に進めて行きたい」といっそうの協力を参加者に呼びかけた。




◎交流会
公開研究会終了後、会場を移して恒例の交流会『Cafe Chizai』が開かれた。今回のコンセプトは『かえっこバザール』にちなんだ〈料理の取り替えっこ〉。微妙にメニュー構成の異なるプレートをめいめいが手にし、料理を交換しながら取り分けていくという趣向。会話のきっかけ作りにもなかなか有効だったようで、和やかな雰囲気の中、約2時間の交流会があっという間に過ぎていった。

 
   
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