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公開研究会シリーズ4 「ワークショップの開発におけるアーティストと館の関係」

レポート/開催概要

 

2009年11月7日、シリーズ4回目となる公開研究会を東京大学情報学環・福武ホールにて開催しました。今回は、「ワークショップの開発におけるアーティストと館の関係」と題して、アーティストと館(美術館や児童館など)が協力してワークショップを企画・開催する際に、どのような取り決めがなされれば、理想的な展開が生まれるのか、講演とパネルディスカッションを通して出席者とともに考えました。

 
◎開会挨拶・趣旨説明

 大月ヒロ子(ワークショップ知財研究会座長・有限会社イデア代表)

「ワークショップの知財について多くの方と意見交換できる場を設けて、『ワークショップの権利と保護、そして自由な活用』この相反するものを組み合わせていくようなノウハウの蓄積、そしてワークショップのコミュニティを創出できないかと思った」と、公開研究会を始めた経緯を語った大月氏。

第4回となる今回は、「ワークショップの開発におけるアーティストと館の関係」をテーマに、児童館と美術館という館の立場でアーティストと共にワークショップを企画してきた、下村一氏と郷泰典氏の講演のほか、出席者もワークショップの知財について議論できるよう、ディスカッションの場を設けたことを説明し、「これから整えていかなければいけないことたくさんあると思いますが、ぜひ前向きに取り組み、みなさんと一緒にアイデアを出し合い、解決の糸口をみつけたい」と、積極的な参加を出席者に呼びかけた。
 

◎講演1「『コマガタワールド』におけるワークショップ開発とその知財」
 下村 一(こどもの城 企画研修部)

こどもの城がグラフィックデザイナーで造本作家の駒形克己氏と行った企画展「コマガタワールド」でのワークショップの開発過程とその知財について、さまざまなプログラムを企画している下村氏から紹介された。
 
こどもの城は1985年に開館した総合児童センターで、幅広い分野で「遊び」のプログラムを開発しているが、開館当時からワークショップという言葉を使用している。アーティストとのワークショップも多く実現し、1997年には「コマガタワールド」を開催。また開発したプログラムを「動くこどもの城」事業として全国の児童館に情報発信する機能を持ち、「コマガタワールド」も1998年から2006年にかけて巡回した。
 
下村氏は当時を振り返り、「造形的なものは専門外で、アーティストとのやりとりも初めてだったが、上司から『駒形さんはグラフィックデザインや絵本をつくるプロだけれど、こどもの城のスタッフはこどもと接する分野でのプロだから、対等に接しなさい』とアドバイスを受け、アーティストからの提案をベースに、環境設定や導入方法については意見を述べるなど、駒形氏とコンセンサスをとりながらプログラムを組み立てていった。その後の展開として、こどもの城から積極的に提案し、ワークショップの改良や新たなワークショップの開発など、両者間でディスカッションしながら価値観を共有し、信頼関係が築けるようになったと」話した。
 
また、駒形氏の作品展示とワークショップの開催および普及のための研修を行う「動くこどもの城」事業として「コマガタワールド」の巡回展を実施するにあたり、普及や知財に関して駒形氏と協議し取り決めた内容を以下のように紹介した。
・作品の所有権は駒形氏が持ち、こどもの城が作品を預かって「動くこどもの城」事業では無償で使用する。
・作品は必要に応じて両者で協議のうえ、更新していく。
・ワークショップについては、こどもの城から主にアイデアを出した普及用(駒形氏の許諾なしで開催可能)と、駒形氏が実施するものを区別する。
・毎年度末に両者の協議の場を持つ。
 
「問題が起きる度、話し合い、納得した上でルールを決めてきましたが、契約書みたいなものは一切取り交わししていません。契約書があった方がよかったのではという気持ちと、逆に契約書がないからこそ良い関係が続けてこれたのではないか」と契約書の二面性を指摘した。
 
最後に、「ワークショップの知財と普及を保つことは難しいが、ぜひいいものを広めていきたい。ワークショップに関わる人たちがある一定のルールを立ち上げ、アーティストの制作活動を保障しながら普及できるシステムづくりができることが望ましい」と締めくくった。


◎講演2「ワークショップ・プランナーとしてこころがけていること」
 ゴウヤスノリ/郷 泰典(ワークショップ・プランナー/東京都現代美術館 学芸員

“フリーのワークショップ・プランナー”と“東京都現代美術館の教育普及担当学芸員”。2つの立場を持つ郷氏が、ワークショップ・プランナーとしてのこころがけを以下のように語った。
・ワークショップ・プランナーとしてやっていくために、ワークショップのノウハウを学び、師匠と仰ぐ世田谷美術館の高橋直裕氏にノウハウを活用していくことのお伺いをたてた。
・既に行われているプログラムを参考にする場合は、事前に相手の許可をもらう。
・タイトルについて気にする。タイトルを決める際にはネットで検索し、同じものがあった場合は内容を精査し、タイトルの変更やサブタイトルで差異化を図る。自身の企画・実施したワークショップと酷似したプログラムがあったことにも触れ、「タイトルは重要」と話した。
・アーティストとのコラボレーションの場合、アーティストのアイデアや創作物を保護尊重する。
 
そして、共同で企画した6人のアーティストからの知財に関する意見を交えながら、アーティストと行った取り決めを紹介した。情報の告知と共有を挙げ、今回の公開研究会に際しても6人全てのアーティストに告知を行ったこと。作品の扱いについては、アーティストが制作した作品をプログラムで活用したり、最終的なまとめ方によって参加者の成果物もアーティストの作品になる場合もあることから、考慮すべき取り決めが多数発生しやすく、その都度判断していく必要があったことを説明した。東京都現代美術館では、最初にアーティストと委託契約を結んではいるものの、知財に関してはワークショップゆえ終わらないと明らかにならないことも多いので記載はなく、取り決めも事後の確認に留まっていることを話し、「ワークショップの知財に関し文面に残すということが大事なのでは」と意見を述べた。
 
また、郷氏が企画するプログラムでは体験や経験の共有に主眼をおいているため、成果物が作品(モノ)とならないケースもあり、報告書には関わった人たちの名前を記載するなど、ワークショップの全体像がわかるよう、その表現方法や表記の扱いにも注意を払うなど記録の重要性についても言及した。
 
最後に、「ワークショップの知財を一言でいうと、(師匠からの教えを踏まえ)『最低限の仁義はとおせ!』これが一番重要な事だ」と力強く語った。
 

◎パネルディスカッション
 パネラー:
   下村 一(こどもの城 企画研修部)
   ゴウヤスノリ/郷 泰典(ワークショップ・プランナー/東京都現代美術館 学芸員)
   金沢健一(アーティスト)
 進行:
   山内祐平(東京大学情報学環 准教授)

講演に続いて、アーティストと館、双方の現状と課題についてグループディスカッションを行った。その意見をもとに、前出の2人にアーティストの金沢氏が加わり、討議が進行した。


――アーティスト不在(亡くなった場合も含めて)でワークショップを開催する際、作品やコンセプトを参加者に伝える工夫は?
下村氏「アーティストには事前に相談します。アーティスト・駒形さんの考えを伝える工夫としては、こどもたちが作品を触れるようにしています。また、子どもの城開館時にブルーノ・ムナーリの展覧会を開催し、その後24年に渡って巡回しています。彼が存命の時は、記録写真を送るなど必ず連絡をとり、1998年に亡くなってからは、「ブルーノ・ムナーリ協会」を立ち上げて作品の権利を持つ彼の息子さんに、開催許可を得ていると聞いています。アーティストが亡くなっても、筋を通すということが必要だと思います」

――みんなでつくった作品や成果物は、だれが著作権を持つのか?
金沢氏「私の行っているワークショップでは、自分がつくっている作品と同じコンセプト、同じ素材を使い、参加者は作品制作を行います。そこではコンセプトやアイデアこそが作品の重要な要素だと僕は考えているので、ワークショップを実施する際、作品の著作権は金沢健一にある旨を記載した契約書を参加者との間にかわしています」
下村氏「参加者のオリジナリティが出てくるケースもあるので、考え方としては共同著作と捉えてもいいのでは」

――アーティストとして館からまかされ、ワークショップをする際の課題は?
金沢氏「私が経験したワークショップはほとんど美術館からの丸投げ。自分の考えを伝える上で、人と人が直接出会い、共に何かをつくりあげていくワークショップは有効な手段だが、進行などアーティストがうまくできるとは限らない。館にそういった専門家がいてくれるといい」
郷氏「フリーで依頼されたときの話だが、講師料という報酬しか館の設定にない場合が多い。準備も含めると何ヶ月もかけているのに、当日分の費用しかもらえないのは、金額が見合っていないなと感じた」

――館とアーティストの役割分担と責任の範囲についてどう思うか?
下村氏「記録は館が責任を持ってとるべきだと思う。こどもの城では、こどもの活動を理解してくれるアーティストの選択と、こどもとの活動という意味でアーティストへのノウハウや情報提供が、館の責任だと思う」
郷氏「東京都現代美術館にはたくさんのノウハウやプログラムの蓄積があるけれど、写真や映像などの記録がわかりやすく整理されているとはいえない。プロセスやプログラムの内容がわかるようアーカイブしていくことも必要だ」

――アーティストと館が幸せにコラボレーションできるためのアイデアは?
金沢氏「アーティストの考えや個性を理解した上でサポートできるワークショップの研究家・専門家の養成。また次の世代に伝えるためにも、ワークショップの検討・改良を行い、その蓄積をマニュアル化して残していくこと。さらにその記録を他館と共有できるといい」
下村氏「アーティストと館の人間が出会う場が広くあるといい。両者がディスカッションし相互理解できれば、面白いものができると思う」

最後に進行役の山内氏が、「ワークショップも大学と企業の共同研究の問題と非常に似ている。ともに非常にクリエイティブなプロセスゆえ、結果がわからないので、最初に契約書を結べない」と両者の共通点を挙げながら、共同研究では大学と企業間を取り持つお見合い組織が存在するとし、「アーティストと館を支える仕組みとして、NPOや中立組織が、契約のフォーマットや流れを流通させるだけでもだいぶ違うのではないか」と、そのシステムの応用を提案した。そして「この研究会がきっかけになるとよいと思います」とまとめた。

研究会座長の大月氏が閉会挨拶をし、公開研究会は終了。さまざまな立場の参加者より、多様な意見や本音が飛び出し、非常に盛り上がった話し合いとなりました。その後は会場を移し、意見交換の場として茶話会が開かれ、終始和やかな雰囲気で、出席者同士の交流が図られました。

 
   
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