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公開研究会シリーズ5 『ワークショップの事業化を考える』

レポート/開催概要

 

2011年1月30日。シリーズ5回目となる公開研究会は「ワークショップの事業化を考える」と題して3331 Arts Chiyodaにて開催された。
昨今、ワークショップが実施される機会は増え、そこに様々な形で関わる人も増えている。 ワークショップを安定して企画、実施、運営していくことを考えたときに、ひとつの方法として事業化がある。 今回は3名の登壇者から事業化について講演をいただいた。 実際にどのような運営をしているのか、事業化への課題、問題点、展望など、活動経験からの貴重なお話であった。 パネルディスカッションは、会場からの質問に答える形式で行われた。 今回初めてツイッターの画面を会場のスクリーンに投影し、リアルタイムで届くつぶやきが会を盛り上げた。 最後にはワークショップに関心の高い人たちが集まったこの機会の交流活性の為にと100名近い参加者ひとりひとりの自己紹介があった。
公開研究会終了後の茶話会では、登壇者のひとりケミカルエンターテイナー・なおやマンのワークショップ「どっちのジュースショー」を参加者全員が楽しんでにぎやかな会となった。 会場には、朝倉氏の「ピッケ」と原田氏の「ビスケット」のデモも用意され、あちらこちらで新しい交流が生まれ盛況のうちに閉会した。


 
◎開会挨拶・趣旨説明

 大月ヒロ子(ワークショップ知財研究会座長、有限会社イデア代表)

ワークショップの分野は、日本では80年代から始まり、この10年めざましい広がりがみられ、そのノウハウや方法論は様々な分野で利用されてきています。 特に最近ではワークショップに様々なかたちで関わる人や企業がますます増えています。 ワークショップの現状が進化していく中で出てきたさまざまな問題の中に知財もあり、ワークショップ知財研究会は月に1回メンバーが集まり研究、発表、話し合いをするかたちで2006年に発足しました。 1年間の研究活動を1冊の本「こどものためのワークショップ〜その知財はだれのもの」にまとめた後は、ワークショップに関わる方たちと知財について考える活動として公開研究会を続けてきました。
5回目を迎える今回は「ワークショップの事業化」をテーマに3名の方に講演していただきます。 今回初めてツイッターを導入して映し出されるスクリーンに飛び入りのコメントも楽しみにしています。 今日も様々な分野の方が参加されているのでシンポジウム後の茶話会でも是非、参加者同士の交流を深めていってほしいと思います。



◎講演1「『ヘンテコパーティー』で、毎日の「当たり前」を「ワクワク」に!」
 なおやマン/島崎直也(ケミカルエンターテイナー/有限会社ケミカルエンターテインメント代表)

2004年に独立、夫婦で起業しサイエンス・ワークショップを行う「なおやマン」こと島崎直也氏と、しま:アイ氏は、企業やミュージアム、カルチャースクール、学校などで活動を続けている。 シンポジウムの会場を江戸時代に見たて、ショーアップされたワークショップの実演を交えながら会社設立以前とその後の活動を紹介した。 ふたりの息のあったユニークな掛け合いは参加者を巻き込み、会場は笑いにつつまれた。

ケミカルエンターテインメントの事業内容は、行政や企業主催のイベントや学校や教育展示施設でのワークショップ「へんてこパーティー」の開催です。 他にも企業の環境への配慮をわかりやすく伝える内容やガスなどのエネルギーのエコ技術をこどもたちが楽しみながら興味をもてるようにステージショーにして企画実施しています。 また教育展示施設の展示プログラムの企画なども行っています。

最近では、環境やサイエンスの分野以外でもワークショップの企画実施の依頼がくるようになりました。 大人対象の身近な素材で遊びづくりワークショップやクラッシックのコンサートをより楽しむためのワークショップの開催、提携NPOへのワークショッププログラムの提供もしています。 活動の幅が広がり、たくさんの人に参加してもらえるようになってきました。

かつては環境教育施設にインタープリターとして勤務していましたが2004年に独立しました。 その理由は、参加者や主催者から対価をもらって開催することで、自分たちのワークショップやショーの質をあげたいと思ったからです。 そのメリットは、自分たちのスタイルで伝えたいことを伝えられること、いろんな場所で開催することができ、いろんな依頼に応えることです。 問題は2人で営業や事務作業など全ての仕事を行わなければならず、企画実施の時間を取られてしまうことです。現在経営や営業を得意とするメンバーが足りません。

事業の今後の目標は、より多くの人にワクワクを届けるために継続的に学校や病院などの施設へ出向いて開催したり、家でできるコンテンツ開発も手がけたいと思っています。 また、こども・親子向け教育イベント以外の新しい分野へ更なる進出も考えています。 いずれは「ヘンテコ小屋」という自分たちの拠点を日本中につくることが夢です。

有限会社ケミカルエンターテインメント
ヘンテコないつもと違う視点で体験・体感するショーアップしたワークショップを通して、こどもたちの毎日をワクワクに変えていく活動を全国で展開している軽井沢在住のワークショップエンターテイナー。 身近な不思議を五感を通して感じ、比較し、解説を聞く体験は参加者の理解を深め印象に残るよう衣装や小道具、台詞にいたるまで工夫が凝らされている。



◎講演2「おはなしづくりの活動をひろめるために」
 朝倉民枝(クリエイター/株式会社グッド・グリーフ代表取締役)

デジタル絵本の分野で活躍する朝倉民枝氏は、こども服デザイナーを経て2001年に3Dコンピューターグラフィックスデザイン事務所を開設した。 フリーになってから制作した2つのソフト「ピッケのおうち」「ピッケのつくるえほん」とこれまでの活動事例を紹介した後、このソフトを使った事業化についての課題や今後の展望を語った。 開発者としての理念が、こどもたちを温かく見守る優しい眼差しとして一連の活動の中に一貫してあらわれていた。

「ピッケのつくるえほん」のソフトと、ソフトを使ったワークショップの展開は4つのタイプがあります。自主企画運営、講師として出向く場合、ソフトとノウハウ提供の場合、ソフト購入のみの場合です。 おはなしづくりのソフトは聞き手としての他者が必要です。 ワークショップでは最初に誰に贈る絵本かを決めて制作し、その人にお話を読んであげましょうと約束して終了します。 手早く絵本をつくる便利ツールとしてではなく、ソフトを埋め込んだ一連の活動として普及を進めるため、教師やファシリテーターがいる場が理想です。 ワークショップは自由度が高いものの採算をあわしづらくビジネスとして不安定であり、また私自身は開発に軸足を置きたいので、信頼できるパートナーが見つかった時に事業化したいと考えています。 新しい技術による次の企画もありますが人と資金が足りず停滞しています。

苦労している点は、費用と時間を生み出すことです。 無償公開を続けていた1作目について某企業が賛同し運営費の一部を支援してくれた時期がありました。先を見通して計画をたてられたその2年間に、2作目のソフトを開発しました。 事業化は活動を続けるために避けて通れません。 2作目は事業化しようと考え、信用を得る為キッズデザイン賞、グッドデザイン賞に応募し、学校などにも参入できるよう法人化、キャラクタ名とソフト名を商標登録申請しました。 これまでの事例として、家庭のほか、学校やこどもの施設、小児病院等での利用があります。小学校では総合学習や、算数、国語の授業で使用され、こどもの自信に繋がったという評価をいただいています。 今年は学校への導入を事業の柱としていきたいと考えています。

事業化は私にとってソフトの開発に似ています。 理想に向かってあらゆるリソースを総動員してたくさんの人に助けてもらいながら進めています。 事業を軌道にのせてソフトを開発し、おはなしづくの活動をすすめていきたい。 そして何よりも上質の楽しいうれしいを体験できる場と機会をつくり、自分を肯定し人を信頼し未来を信じる心を育てることで、本当の意味でこどもを幸せにすることに心を尽くしていきたいです。

「ピッケのおうち」
絵本を楽しむように親子で楽しんでほしいと初めてつくったインタラクティブ絵本のソフト。 幼い頃に安心感の中であじわう「楽しい」や「うれしい」はコミュニケーションの基盤を育てその後の人生を歩む力になると考えて開発。 2002年から無償公開。

「ピッケのつくるえほん」
2作目となるおはなしづくりのソフト。 おはなしづくりをしたあとプリンターで印刷し、切って折って製本。自分がつくった絵本を声をだして読み聞かせる。 提供先別に、パーソナル版、学校版、ミュージアム版、病院版、フェイスブックアプリ版がある。



◎講演3「デジタルワークショップの可能性と課題(と事業化)」
 原田康徳(NTTコミュニケーション科学基礎研究所/ワークショップデザイナー)

企業の中の研究者である原田康徳氏は「ビスケット」というプログラミングソフトを開発し、「ビスケット」を利用したワークショップを数多く実践している。 こどもの頃は粘土遊びが好きで、高専時代初めて触れたコンピューターの楽しさに「コンピューターは粘土だ」と思ったという。 時代とともに世の中に普及していったコンピューターは仕事の効率化を目的としてつくられたものであり粘土のような自由さを感じるものではなかったため、コンピューターの楽しさを知ってほしくて2003年頃「ビスケット」を開発したという。 そして、研究開発者としての視点からものづくりには設計が大切でそれをワークショップの中でも伝えていることや、事業化構想ともいえる貴重なアイディアが語られた。

ワークショップの言葉を定義することからこの講演をはじめます。 ここでは一斉授業にはできないという否定形をワークショップの定義とします。 一斉授業は、ひとりの先生がたくさんの人に伝えるには効率がよいです。 しかし最近は、一斉授業が成立することや評価については、社会の複雑化や高度経済成長期ではなくなった現状を背景に崩れてきました。 そこでいろんな参加者がいろんな目的で成長し、ゴールもバラバラでよいワークショップが注目されています。

「ビスケット」のワークショップは一斉授業の利点も取り入れふたつのフェーズにわけています。 ひとつ目のフェーズは使い方を理解すること。特定の技を習得するのは全員の目標やゴールが揃っているので一斉授業の形式を使うことが有効です。 次のフェーズは作品をつくることで、習得した技を好きなように使って良いし、他の人の様子を見にいってもよい。 前半の説明がうまくいった時は、後半参加者同士の会話をうながす仕掛けをするだけで講師は見守っていればよいのです。 実際に「ビスケット」は、小学校の課外活動などで継続的に使われています。

開発者としては「ビスケット」を日本中、世界中の人々にやってほしいと思っています。 ワークショップの事業化については、以前「ビスケット」をつかってベンチャーを立ち上げようと思ったことがあり、その時考えたことをお話しします。 ワークショップに関わる人間の『誰を食べさせるべきか?』から考えることが大事です。 普及させることを一番の目的にした時にはワークショップを実施する人が稼げる仕掛けが必要です。 継続して開催したい場合の問題点は、ワークショップにかかる人件費、会場費、宣伝費です。 それと比較して教室系のビジネスは、学習塾やピアノ教室、ロボット科学教室などが存在し、長年継続しています。 フランチャイズで広がっている所もあるということはビジネスとして成功しているのでしょう。 これらに共通している部分を参考にワークショップを毎週やる『ワークショップ塾』の構想を立てました。 ファシリテーターの育成やコンテンツを集めることなど課題はありますが、デジタルならば規模が大きくなってもコストが増えないことがメリットになることでしょう。

「ビスケット」
ビスケットは絵でプログラミングするソフト。 単純な動きから複雑な動きまで難しいことを覚えなくてもプログラミングの楽しさを知ることができ、アニメーション、ゲーム、動く絵本なども簡単に作ることができる。



◎パネルディスカッション
 パネリスト:  朝倉民枝、なおやマン/島崎直也、原田康徳
 進   行:  大月ヒロ子

パネルディスカッションは、進行の大月氏が会場の参加者から出た質問を投げかけ、パネリストの3人が答える形で進行した。 パネルディスカッション中につぶやかれたツイッターの質問も議題に挙げられ、密度の濃いディスカッションとなった。

――広報をどのようにしていますか?(どれだけ多くの方に参加してもらえるか、またワークショップに興味をもたないかたへ参加を促すため)
島崎氏 「おなじような仕事をしている同業の知人による口コミ。広報力を持つ提携している団体(NPO「CANVAS」のホームページなど)から。ショッピングセンターなど人目につく場所へ出向くことなどです」
朝倉氏 「メールマガジンです」
原田氏 「拠点をもっている人をみつけて開催します。広報はその方たちにまかせます。僕自身はしません」

――ワークショップの満足度はどのように測っていますか?
朝倉氏 「余裕のあるときはアンケートを書いていただいています。ソフトのフィードバックがほしいので5段階で評価するものや、こどもに対しては絵でもいいから自由にかいて、というものです。参加者からメールで感想をいただくこともあります」
島崎氏 「参加費を払って、リピートしていただけるか?と、こどもがいかに熱中しているか?を自分自身の中で気をつけて見てバロメーターとしています」
大月氏 「会場に『協同と表現のワークショップ 学びのための環境のデザイン』の著者茂木先生がいらっしゃいます。この質問についていかがでしょうか」
茂木氏 「事業化を考えるのでしたら評価は必須でこれから大変重要になっていくでしょう。ワークショップの中に評価を取り入れていくことをこれから更にしていただきたいと思います」
大月氏 「ワークショップが終わった後の参加者の顔が上気して湯上がりみたいだったのを思い出します。これからは評価の仕方も模索していく必要がありますね」

――ワークショップの継続性について
大月氏 「ワークショップを一過性のブームに終わらせないためには?」
島崎氏 「工作や表現活動を含めいろんなワークショップがあると思いますし、いろんな定義があると思います。その中でお互いが切磋琢磨できる状況が必要です。そのひとつに事業化もあり、淘汰されることでいいものが残っていく状況になれば次のフェーズにつながっていくのではないかと思います」
朝倉氏 「自分自身がやることの質を下げないこと。所属する分野のワークショップを(私はデジタル×ワークショップですが)社会の認知が上がるよう、自分の責任できちんとやっていこうという思いで継続していくことが必要と考えています」
原田氏 「定義を広げいろんな温度の人がワークショップの世界に入って来られて、みんなで広がっていくことも継続につながるのではないでしょうか」

――ワークショップの開発の費用とその対価の確保について
大月氏 「開発の対価を得ることは難しい現状で、どのようにしていますか?との質問です」
朝倉氏 「まさにそれが課題そのもので、できていません。初期の頃は三次元CGで稼いだお金でピッケのことをやっていました。自分自身で問題だと思っているのは、同じ内容をいろんな値段でやっていることです。開発した自分自身が講師の時と、他者が講師の時の参加費が逆転していたり、無料の場合もあります」
大月氏 「家族で身を投じたなおやマンはどうですか?」
島崎氏 「家族でやるメリットは、企画、開発としての費用がかからないことだと思っています。対価を得るためという意味では、差別化を考えています。ワークショップをステージショーやヘンテコパーティと名づけ、講師をすることを出演と呼び、ワークショップとはカテゴリーの違うものとしての売り方をしています」
原田氏 「企業の中の研究者なので、研究論文を書いて発表することが仕事。なのでビスケット・ワークショップは研究と呼んでいる。デバッグして挑んでも、こどもたちは予想外の使い方をします。ソフトウェアの開発研究の上でもワークショップの場で実際に使ってもらうことは大切です」



◎閉会挨拶
 田村拓(株式会社CSK執行役員、ワークショップ知財研究会メンバー)

すばらしい講演に皆さんの信念を感じ、感動をおぼえました。 皆さんが事業のパートナーを求めていらっしゃることが印象的で、この公開研究会の場をつくっている意義がそこにもあると思います。
私はCSKという会社でCAMPという社会貢献の活動をしています。 事業化というテーマの今回、「ワークショップの運営に経済合理性を求めていくのはどういうことか?」に、企業から参加している私の問題意識があります。 ワークショップの良さを訴求していくためには、経済合理性が担保され、それで食べていくことができるようになり、その先に多様な世界が広がっていくことが重要だと考えています。
私が企業の立場からやっていることを2つ紹介します。 ひとつはデジタル教科書教材協議会への参画です。 学校の場でデジタル教材を普及させようというものですが、デジタル機器を取り入れるということだけではなく、その中にワークショップ的な授業を普及させていきたいと活動している。 また、CSKでは人材開発や研修、新規事業を考える仕組みにもワークショップを取り入れている。 最近では、ファシリテーターという言葉も社内でよく聞かれるようになった。 こども対象に行ったワークショップも企業の中でさまざまな形で使われ始めています。
企業の現場でもワークショップが必要とされる時代は正に迫っていて、 それを背景にしながら事業化が進んでいく時代はそこまで来ていると思います。 皆さんの理念が組み込まれてさらにワークショップが発展していけるように、この研究会がつながりのプラットフォームとなっていくことを願っています。



当日の講演映像は、こちらでご覧になれます。
 
   
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